絵画や彫刻等の美術品を購入すれば節税になるの?
会社や事務所、店舗といったところに飾られている絵画等を目にすることはよくありますよね。
会社の応接室なんかにも必ずといっていいほど飾られています。
ふと目にすると、交渉や会議の前の張り詰めた緊張感を幾分かは和らげてくれるものです。
そんな絵画等の美術品を法人や個人事業主が購入すると、税務上どのような取扱いになるのでしょうか。
「美術品は価値が減少しないから、買っても節税にならないんじゃ?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、意外とそうでもありません。
普段あまり気にされていないであろう美術品の税務上の取扱いを紹介します。
目次
従前の取扱い
美術品等が減価償却資産に該当するか否か、従前の取扱いでは、
・美術関係の年鑑等に登載されている作者が制作した作品かどうか
・取得価額が1点20万円以上、絵画では号当たり2万円以上であるかどうか
が判定基準でした。
ちなみに、20万円という金額が低すぎるという指摘も上がっていたようです。
1点100万円未満なら原則として経費にできる
今から約3年前の平成26年度の税制改正により、美術品の取扱いが変わりました。
美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ(国税庁HP)
平成27年1月1日以後に取得する美術品のうち、
・取得価額が1点100万円未満である美術品等は原則として減価償却資産に該当する
・取得価額が1点100万円以上の美術品等は原則として非減価償却資産に該当する
・取得価額が1点100万円以上の美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当する場合は、減価償却資産として取り扱うことが可能
となります。
表にまとめてみると、以下のように取り扱われます。
なお、古美術品、古文書、出土品、遺物など歴史的な価値があり、代替できないものは金額に関係なく減価償却することはできません。
購入した美術品は、減価償却をして毎年(毎期)少しずつ経費に含めていくことになります。
なお、減価償却する場合は、償却資産税の申告と納付も必要になりますので、注意しましょう。
購入金額の考え方
原則として、1点あたりの購入金額が100万円未満か否かにより、減価償却の有無を判定することになります。
ここで購入金額とは、本体部分のみの金額だけではありません。
額縁も絵画の一部として本体に含めます。
美術品を購入するために直接かかった以下のような付随費用も含めますのでご注意ください。
・引取運賃
・荷役費
・運送保険料
・購入手数料
・関税
・据付費等
「時の経過により価値が減少することが明らか」とは?
「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当すると、1点あたり100万円以上でも減価償却することができます。
法人税基本通達7-1-1によれば、例えば、次に掲げる事項の全てを満たす美術品等が挙げられます。
・会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。
・移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること
・他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。
倉庫に保管されている場合はどうなるの?
現在、展示を休止していて倉庫にある場合はその美術品は事業の用に供していて、減価償却できるのでしょうか。
法人税基本通達7-1-3によれば、次のようになります。
倉庫等に保管され現在展示を休止している美術品等であっても、その休止期間中必要な維持管理が行われており、いつでも展示可能な状態にあるものについては、事業の用に供していることになります。
つまり、いつでも展示できる状態にしておくことが必要となります。
耐用年数
減価償却を行う場合の耐用年数は、次のとおりとなります。
国税庁HP・前掲FAQ、Q7より
(1) 室内装飾品のうち主として金属製のもの……… 15年
例えば、金属製の彫刻(2) 室内装飾品のうちその他のもの………………… 8年
例えば、絵画・陶磁器・彫刻(主として金属製のもの以外のもの)