矢口税理士事務所
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高額所得者ほど不利 仮想通貨は副業としての選択肢になり得るか

昨日(H29/12/1)、国税庁は仮想通貨に関する所得の計算方法について発表しました。

仮想通貨の売却、商品での購入、仮想通貨同士の交換等における取引について、具体的な計算方法を明らかにしました。

 

最近、仮想通貨の相場は急激に上昇しています。

そんな最中での国からの発表。

具体的な計算方法を示すことによって、仮想通貨で稼いでいる人に対してきちんと申告するよう促しているようにも思えます(個人的な見解です)。

 

仮想通貨により生じた利益は「雑所得」との発表から約3ヶ月(H29/9/6)になります。

以前のブログでも紹介しましたが、現状の取扱いでは、高額所得者ほど税金の負担は増していきます

 

今後、仮想通貨は副業としての選択肢になっていくのか、税金面から考えてみます。

 

参考記事

ビットコインと税金(ブログ記事はこちらへ)

 

仮想通貨の具体例(ブログ記事はこちらへ)

 

 

 

目次

国税庁からの具体例

昨日発表された仮想通貨の設例は全部で以下の9種類あります。

①仮想通貨の売却

②仮想通貨での商品の購入

③仮想通貨と仮想通貨の交換

④仮想通貨の取得価額

⑤仮想通貨の分裂(分岐)

⑥仮想通貨に関する所得の所得区分

⑦損失の取扱い

⑧仮想通貨の証拠金取引

⑨仮想通貨のマイニング等

 

記事はこちらへ(国税庁HP)

 

9種類に分けることによって、仮想通貨から生じるほぼすべての取引に対して税金の取扱いが明らかになりました。

具体例①を見てみます(国税庁HPより、太字の下線や囲み線は筆者加工)。

 

 

簡単に書くと、「200万円で4ビットコインを購入し、その後0.2ビットコインを売却した」という取引です。

計算方法は予想通りといいますか、有価証券と同じ方法ですね。

1単位当たりの取得価額を求めた上で取引数を乗じるという方法です。

方法自体は簡単なので、取引がたくさんあってもエクセルで計算式を組んでしまえば、そんなに時間はかからないでしょう。

 

また、仮想通貨を1年間で複数回購入した場合は、移動平均法または総平均法を使用します。

取得価額の求め方も有価証券と同じです(具体例④を参照)。

 

現状では利益の半分が税金という感覚を

ここでふと疑問に思ったのですが、

計算方法は有価証券と同じだというのに、所得区分は有価証券とは異なる

ということです。

 

例えば、上場株式を譲渡すると譲渡所得として申告分離課税になります。

税率は現在20.315%(所得税、復興特別所得税、住民税)で済みます。

 

一方、仮想通貨の場合は雑所得として他の所得と合計して最高税率55%(住民税含む)の税金が掛かります(具体例⑥)。

税率は、その人の所得金額によって変わります。

現状の税制では、所得税は高所得者ほど税率が高くなるという累進課税制度が採用されています。

そのため、仮想通貨以外の他の所得金額が大きいほど、必然的に仮想通貨で得た利益に対しても高い税率で税金が掛かってしまいます

 

高所得者に限っていえば、仮想通貨はあくまでイメージですが、

利益の半分が税金になる

のです。

 

(出典:国税庁HP「タックスアンサー」)

 

こうなると、せっかく仮想通貨で稼いだ利益も半分が税金になるならやっぱりやめておこう、と考える人も出てくる可能性はあります。

現在は副業や資産運用として利用できる商品はたくさんありますので、他の選択肢も考えておく必要がありそうです。

なお今後、改正で取扱いが変わる可能性はありますので、何とも言えませんが、今の税制なら明らかに不利ですよね。

 

雑所得が不利な理由は他にもある

他の所得と相殺できない

仮想通貨により得た利益は雑所得となり、他の所得と合計して税金がかかるため高所得者ほど不利、ということは前述しました。

しかし、雑所得が不利な理由はまだ他にもあります

 

もしかすると、こちらの方が税金的にキツイかもしれません。

以下の取扱いを見てください。

(国税庁HPより、太字の下線は筆者加工)

 

要するに、赤字がでても他の所得とは相殺できないよ、ということです。

中には赤字が出ても他の所得と相殺できるものもあります。

不動産所得

事業所得

山林所得

譲渡所得

の4つです。

残念ながら、雑所得は入っていません。。。

 

分かりやすいように、具体的な数字で考えてみましょう。

 

他の所得が500万円の黒字とします。

例1)その年に事業所得は400万円の赤字が出ました。

ポイントは、400万円の赤字が他の所得と相殺できるどうかです。

事業所得は他の所得と相殺できます。

事業所得 ∴500万円-400万円=100万円

残りの100万円に対して税金がかかります。

 

例2)その年に仮想通貨により400万円の赤字が出ました。

ポイントは、仮想通貨により生じた赤字の取扱いです。

雑所得のため、他の所得と相殺できません

雑所得 ∴400万円は切捨てられます。

500万円に対してまるまる税金がかかります。

 

例1と例2では、所得で400万円の差があります。

もし、その人の税率が仮に55%なら、約220万円も税金の負担が増えるのです!

 

翌年以降に赤字の繰越ができない

追い打ちをかけるがごとく、不利な点がもう一つあります。

それは、赤字が残っても翌年以降に持ち越せないということです。

 

こちらも具体的な数字と図を使って考えてみましょう。

赤字の繰越ができないなんて明らかに不利だと理解できます。

 

仮想通貨により生じた損益が以下とします。

平成29年分:400万円の赤字

平成30年分:150万円の黒字

平成31年分:200万円の黒字

 

 

赤字の繰越ができる場合(「損失の繰越控除」といいます。)は以下のように平成30年分平成31年分とも税金は発生しません。

例えば、上場株式を譲渡して損失が出たケースが該当します(上場株式等の譲渡損失の繰越控除)。

 

 

一方、赤字の繰越ができない場合は以下のようになります。

 

 

仮想通貨により生じた赤字はその年で切り捨てられます。

一切、翌年以降に持ち越すことはできません

翌年以降に黒字が出たら、その年の他の所得と合計してまるまる税金がかかってきます。

 

まとめ

ここまでの取扱いをまとめてみます。

《仮想通貨に関する取扱いまとめ》
①仮想通貨の利益は他の所得と合算されるため、税率が高くなればなるほど税金も多額になる
②仮想通貨で赤字がでても、他の所得と相殺できない
③仮想通貨の赤字は翌年以降に持ち越せない

 

現状の取り扱いは今後変わる可能性もあります。

金融証券税制に関する改正はこれまでも度々ありましたし、場合によっては、より有利な取扱いとなる可能性も秘めています。

仮想通貨の取引をしている人は、今後の動向に是非注目していっていただきたいと思います。

 

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