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加入前に検討しておきたい中小企業退職金共済のメリットデメリット

従業員のために、中小企業退職金共済(中退共)に加入しようと検討している会社経営者の方はいらっしゃるでしょう。

加入前に検討していただきたい点がいくつかありますので、ご紹介します。

 

 

目的は「中小企業のための退職金制度」

中小企業退職金共済という制度は、中小企業のための国の退職金制度です。

大企業なら自社で退職金制度を持っていますが、自社で退職金制度を整備できない中小企業のために作られた制度です。

国の機関である独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しています。

 

事業主が機構と退職金共済契約を結び、毎月の掛金を金融機関に納付します。

従業員が退職したときは、その従業員に中退共から退職金が直接支払われます。

 

平成29年10月現在での加入事業所数は366,892カ所、加入している従業員は約343万人(中退共HPより)となっています。

 

制度の特色ですが、国の機関が運営しているので、安全でしかも確実です。

民間の保険会社なら万が一倒産ということも絶対ないわけではなく、積立金が全額返還される保証はありません。

しかし、中退共は国が破綻でもしない限り安全といえるでしょう。

 

加入条件

加入できる会社

中退共に加入できるのは、次の会社です。

会社なら常用従業員数または資本金・出資金のどちらかに該当していれば加入できます。

なお、個人企業等の場合は、常用従業員数によります。

 

 

常用従業員とは、一週間の所定労働時間が同じ企業に雇用される通常の従業員とおおむね同等である者であって、

  • 雇用期間の定めのない者
  • 雇用期間が2か月を超えて使用される者

を含みます。

加入後、従業員の増加等により、中小企業でなくなった場合、

  • 被共済者の同意
  • 一定の要件を備えている確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度(企業型)または特定退職金共済制度への資産移換の申出

等の要件を満たしていれば、解約手当金相当額の範囲内の金額をその制度を実施する団体である資産管理運用機関もしくは基金または特定退職金共済団体に引渡すことができます。

(中退共HPより)

 

加入させる従業員

原則として、従業員は全員加入です。

ただし、次のような人は加入させなくてもよいことになっています。

  • 期間を定めて雇用される従業員
  • 季節的業務の雇用される従業員
  • 試用期間中の従業員
  • 短時間労働者
  • 休職期間中の者およびこれに準ずる従業員
  • 定年などで相当の期間内に雇用関係の終了することが明らかな従業員

(中退共HPより)

 

加入できない人

次のような方は中退共に加入できません。

  • 中退共制度に加入している方
  • 特定業種退職金共済制度に加入している方

※中小企業退職金共済法に基づく特定業種(建設業・清酒製造業・林業)退職金共済制度には企業として両制度に加入はできますが、同一の従業員が両制度に加入することはできません。

  • 被共済者になることに反対の意思を表明した従業員
  • 小規模企業共済制度に加入している方

(中退共HPより)

付け加えると、個人事業主や法人の役員は加入できません。

 

掛金

毎月の掛金は事業主の指定口座から口座振替により納付します。
掛金は全額事業主が負担し、掛金を従業員に負担させることはできません。

 

掛金月額は、次の16種類から選ぶことができます。

 

 

なお、短時間労働者(パートタイマー等)は、上記の掛金月額のほか特例として掛金月額2,000円、3,000円、4,000円でも加入できます。

 

掛金月額を増額したい場合は、加入後、「月額変更申込書」を事前に提出することでいつでも可能です。

 

メリット

国の助成を受けられる

中退共に新しく加入した際や、掛金を増額した際に一定の条件に当てはまれば、1年間は国から助成が受けられます。

ただし、事業主と生計を一にする同居の親族のみを雇用する事業主は、助成の対象になりません。

 

支払時に全額損金にできる

支払った掛金は、法人の場合なら損金に、個人事業主の場合なら必要経費に全額算入することができます。

 

受取時に優遇されている

従業員が中退共から退職金を一括で受取る際には、その退職金は税制上優遇されている退職所得として扱われます。

また、分割で受取る際にも、その分割金は税制上優遇されている公的年金等の雑所得として扱われます。

 

経営が悪化しても支払われる

自社で退職金を積み立てている場合、万が一、会社の経営悪化等で資金繰りに難が生じると、従業員に支払えなくなる恐れがあります。

中退共では従業員の受給権は守られていますので、経営が悪化したとしても問題なく退職金は支払われます。

 

デメリット

掛金の減額は自由にできない

掛金月額を減額したい場合は、以下のような事由でしか変更できません。

  • 掛金月額の減額をその従業員が同意した場合
  • 現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めた場合

(中退共HPより)

つまり、経営が悪化したからといって、機動的に掛金月額の変更は行えません。

 

直接従業員に支払われる

中退共では、退職金のお金は中退共本部から直接従業員の口座に支払われます。

したがって、解雇等の場合で退職金を支払いたくなくても振り込まれます。

 

短期に退職すると掛捨になる

中退共は納付期間が1年以上にならないと退職金が支払われません。

短期で退職してしまうと、支払った掛金は掛捨になってしまいます。

 

退職理由により退職金額を変えられない

中退共の退職金額は、掛金月額と納付期間によって決まっています。

したがって、退職理由が事業主都合でも自己都合でも退職金額に差をつけることはできません。

 

ただし、懲戒解雇等の場合は、厚生労働大臣の認定を受けたうえで、退職金を減額することはできます。

その場合、減額分の退職金相当額が事業主に返金されることはありません。

 

貸付制度なし

支払った掛金の範囲内で一時的に資金を借り入れることができる、いわゆる貸付制度はありません。

会社の資金繰りが悪化したとしても、自由に資金を活用できないという面があります。

 

まとめ

以上見てきましたように、中小企業退職金共済は便利で比較的利用しやすい退職金制度といえます。

しかし、一方では、退職金が直接従業員に支払われたり、容易に減額できないといったデメリットもあります。

中退共に加入する前に、メリットとデメリットを今一度検討していただきたいと思います。

 

詳細をもっと知りたい方へ

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