経費について考えてみよう
目次
経費で税金の金額は変わってしまう
税理士として仕事をしていて、お客さんからよく聞かれる質問ベスト5に入るのが「経費の範囲」です。
さまざまな領収証を見ていて、どこまで経費として計上すればいいのか悩む人は多いでしょう。
この経費の範囲をきちんと決めておかないと、正確な税金の計算はできないことになります。
正確にいうと多少違いますが、ざっくり税金とは以下の算式で求めます。
売上―経費=利益
利益×税率=税金
利益に税率(所得税率の場合5%~45%まで金額によって異なります)を掛けて求めるのが税金(この場合所得税)です。
利益は売上から経費を差し引いて求まります。
差し引く経費の金額が小さければ利益は大きくなりますし、経費の金額が大きければ利益は小さくなります。
売上は入ってくるものなので、基本的には何もできません。そのままです。
つまり経費の金額によって、税金の金額は変わってしまうことになります。
経費の範囲は具体的に列挙されているわけではない
では、そんな重要な経費というものが法律でどのように定められているのでしょうか。
ちょっと法律的になりますが、必要経費の定義としては、所得税法37条に以下のように書かれています。
(必要経費)
第三七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
となっていますが、なかなか読みづらいですよね。
税法ってほんとに読むのは辛いです(泣)
簡単に要約しますと、経費とは「収入を得るためにかかった費用」のことです。
「えっ、そんな単純なの?」と思われるかもしれませんが、実際に法律にはこういうふうに記載されています。
逆に言いますと、これ以上具体的には経費の範囲は明記されておりません。
もちろん列挙もされていないのです。
ですので、法律は「あなたの業種なら○○と△△と××が経費で、それ以外は経費ではありませんよ。ダメですよ」とは言っていないのです。
ある意味では、経費の範囲はとても曖昧なんです。
要するに、その費用が収入を得るためにかかった(又はかかるであろう)ものなら経費としてオッケーということになります。
業種によって経費の範囲は変わる
しかも経費は営んでいる業種によっても範囲は変わります。
ある経費がこの事業では認められないが、この事業だったら認められるというのはまま存在するのです。
例えば、スーツや衣装です。
通常は仕事用のスーツや衣装は家事に含まれますが、仕事のために特別な衣装が必要なタレントさんの場合でしたら、経費として認められると思います。
また、お昼ご飯にラーメン屋さんが他のお店でラーメンを食べに行ったとします。
通常なら、食事代は家事に含まれるので経費として認められません。
しかし、自分のラーメン屋の味を研究したり調査するために必要なラーメン代なら、経費として認められるでしょう。
このように、経費は業種によっても範囲が変わります。
私はお客さんから聞かれた際には、「経費として必要であることをきちんと納得した説明ができれば問題ない」とお話しています。
客観的に第三者の目線でみた場合にちゃんと納得してもらえるか、そういった視点で考えてみていただければと思います。
経費として認められないもの
経費の範囲について考えましたが、逆に経費として認められないものは何でしょうか。
もうお気づきだと思いますが、食費や自宅の家賃、光熱費などで個人の生活のために支払ったものは「家事費」となり、経費にはなりません。
このことは、きちんと法律で記載されています。
所得税法第45条の一部を引用しておきます。
(家事関連費等の必要経費不算入等)
第四五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
(以下略)
と記載されています。
経費として認められないものを経費に入れるのはNGですので、くれぐれもご注意ください。
では、個人事業を営んでいる方が自宅で仕事をしている場合、すべての家賃や光熱費が経費として認められないのでしょうか。
自宅で仕事をしているので多少経費としてもよさそうですが。
自宅で仕事をしていたら一部経費としてOK
先ほど自宅の家賃や光熱費は家事費となるため経費とできないと記載しましたが、一部例外があります。
それは、自宅で仕事をしている場合等です。
この場合、自宅の家賃や光熱費の一部を按分することで経費に計上することができます。
これも法律で記載されています。
所得税法施行令第96条の一部を引用しておきます。
(家事関連費)
第九六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費
(以下略)
と記載されています。
家事関連費として一部経費として認められています。
ただ、下線部の「明らかに」というところがポイントです。
要するに、誰がみても経費だと「明らかに区分」できていないといけません。
自分で証明する必要があります。
例えば、自宅の家賃を一部経費に計上する場合ですが、前もって按分する割合を合理的に算出しておかないといけません。
家賃でしたら、部屋数や床面積の割合等で区分しておくのが望ましいでしょう。
一度決めたルールは変えない
今まで経費について考えましたが、経費として計上する以上はちゃんと納得してもらうような説明が必要です。
私の場合、その支出前に、経費か否か決めています。
そうしておけば、使った後に経費にしておこうとか、経費に入れたいなあとはなりません。
自分でルール化しておくようにしています。
もちろん、家族で外食する支出は経費としないことは明らかです。
一度決めたルールを変えないというのは事業をやっていく上で、必要なことではないでしょうか。