矢口税理士事務所
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税理士がやさしく解説 平成29年分保険料控除申告書(ポイント中心)

前回に引き続き、年末調整の説明です。

勤務先に提出するのは、

・扶養控除等申告書

・保険料控除申告書

の2種類でしたよね。

 

今回は2回目ということで、保険料控除申告書について説明します。

正式名は、「給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」といいます。

ちょっと長い名称ですよね。。。

 

実は、この書類は2種類の申告書から成り立っています

(1)保険料控除申告書

(2)配偶者特別控除申告書

 

(1)(2)両方をやるとボリュームがあるので、分けて行います。

今回と次回で、(1)「平成29年分の給与所得者の保険料控除申告書」についての解説をします。

 

今回は、主に用語の解説やどんな書類を準備しておけばよいのかについて、

次回で、記載例を示しながら具体的な書き方について、見ていきたいと思います。

 

 

目次

 そもそも保険料控除申告書ってなに?

4種類の所得控除を計算するための書類

保険料控除申告書は、年末調整の必須アイテムの一つですが、その名の通り、各種保険料控除を計算するための申告書です。

具体的には、

・生命保険料控除

・地震保険料控除

・社会保険料控除

・小規模企業共済等掛金控除

の4種類があります。

 

何度か聞いたことのあるものから、初めて聞いたというものまであるのではないでしょうか。

「小規模企業共済等掛金控除」なんかは、会社員の人にとっては特殊かもしれません。

全員が必ずしも控除されるわけではない

これらの所得控除ですが、実はすべての人が関係するというわけではありません。

人によって関係ないものもあります。

4種類ともすべて控除あるよ、って人はそんなに多くないと思います。

 

したがいまして、ご自身に関係のある控除については、年末調整で漏れないようしっかり押さえておきましょう。

生命保険料控除

 

申告書の以下の部分になります。

 

ポイント

生命保険料控除は次の3つの区分に分かれます。

・一般

・介護医療

・個人年金

 

「一般」と「個人年金」は、契約日でさらに新契約と旧契約に分かれます。

「介護医療」は新契約のみです。

 

ちょっとややこしく感じますが、すべて区分は控除証明書に記載されていますので何の心配も要りません。

控除証明書をきちんと確認しましょう。

 

控除額・計算方法

控除額は、旧契約では各5万円新契約では各4万円となります。

旧契約と新契約の両方を適用する場合は、最高4万円となります。

ただし、すべての合計が12万円を超えたとしても、12万円が上限となりますのでご注意ください。

 

控除額の計算方法については、国税庁HPより引用します。

新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額

 平成24年1月1日以後に締結した保険契約等に基づく新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめて計算した金額です。

年間の支払保険料等 控除額
20,000円以下 支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下 支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下 支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円

(注)

  1.  支払保険料等とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額をいいます。
  2.  平成24年1月1日以後に締結した保険契約(新契約)については、主契約又は特約の保障内容に応じ、その保険契約等に係る支払保険料等が各保険料控除に適用されます。
  3.  異なる複数の保障内容が一の契約で締結されている保険契約等は、その保険契約等の主たる保障内容に応じて保険料控除を適用します。
  4.  その年に受けた剰余金や割戻金がある場合には、主契約と特約のそれぞれの支払保険料等の金額の比に応じて剰余金の分配等の金額を按分し、それぞれの保険料等の金額から差し引きます。

旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額

 平成23年12月31日以前に締結した保険契約等に基づく旧生命保険料と旧個人年金保険料の控除額は、それぞれ次の表の計算式に当てはめて計算した金額です。

年間の支払保険料等 控除額
25,000円以下 支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下 支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下 支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円

(注)

  1.  いわゆる第三分野とされる保険(医療保険や介護保険)の保険料も、旧生命保険料となります。
  2.  支払保険料等とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額をいいます。

新契約と旧契約の双方に加入している場合の控除額

 新契約と旧契約の双方に加入している場合の新(旧)生命保険料または新(旧)個人年金保険料は、生命保険料又は個人年金保険料の別に、次のいずれかを選択して控除額を計算することができます。

適用する生命保険料控除 控除額
新契約のみ生命保険料控除を適用 (1)に基づき算定した控除額
旧契約のみ生命保険料控除を適用 (2)に基づき算定した控除額

新契約と旧契約の双方について

生命保険料控除を適用

(1)に基づき算定した新契約の控除額と(2)に基づき算定した旧契約の控除額の合計額(最高4万円)

 

 

準備しておくもの

保険会社から送られてきた生命保険料控除証明書を添付します。

なお、平成23年12月31日以前に締結した保険契約(旧契約)等で年間保険料が9千円以下のものについては添付省略できます。

原本が必要なので、引落の通帳コピー等では認められません。

 

地震保険料控除

 

申告書の以下の部分になります。

 

ポイント

地震保険料控除の対象となるのは2種類あり、

「地震保険料」

「旧長期損害保険料」

です。

 

地震保険料

地震保険料とは、

・本人又は本人と生計を一にする親族が所有している

・自宅建物(常時居住)、生活に通常必要な家財

を保険や共済の目的としており、

・地震、噴火、津波、火災等が原因により損害を受けた場合に支払われる保険で

・本人自身が支払ったものに限り

控除を受けられます。

 

 

旧長期損害保険料

以前税制改正があり、改正前の短期の損害保険契約については控除を受けられません。

ただ、以下の要件を満たす損害保険契約(旧長期損害保険契約)については、地震保険料控除の対象とすることができます。

国税庁HPより引用。

・平成18年12月31日までに締結した契約(保険期間又は共済期間の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)

・満期返戻金等のあるもので保険期間又は共済期間が10年以上の契約

・平成19年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの

 

ポイントは2点

本人が支払っている

自宅兼店舗の場合自宅部分のみが控除の対象となりますが、店舗部分は個人事業の必要経費とすることが可能です。

保険料を床面積等で按分しておくのがよいでしょう。

 

控除額・計算方法

支払った金額がそのまま控除額となります。

ただし、上限が50,000円です。

旧長期損害保険については、上限が15,000円です。

 

地震保険料と旧長期損害保険が2つある場合は、合わせても50,000円しか控除を受けられません。

 

また、1つの契約で地震保険料と旧長期損害保険の両方を支払っている場合は、一方のみしか控除を受けられません。

この場合、控除額の大きい有利な方を選択しましょう。

 

準備しておくもの

金額の多寡にかかわらず、保険会社から送られてきた地震保険料控除証明書を添付します。

原本が必要なので、引落の通帳コピー等では認められません。

 

社会保険料控除

 

申告書の以下の部分になります。

 

ポイント

給料から天引きされている社会保険料については、記載する必要はありません

生計を一にする親族の保険料を本人自身が支払った場合にも本人分として控除できます。

・社会保険料控除の対象となるものは、たとえば、国民健康保険、国民年金、国民年金基金、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険、労災保険等です。

 

生計を一にするについてはこちらの記事へ

 

控除額・計算方法

実際に支払った金額がそのまま控除額となります(支払ベース)。

しかも、控除額に上限はありません

 

たとえば、滞納していた過去2年分の国民年金を今年まとめて一括納付した場合、全額が控除対象となります。

 

準備しておくもの

国民年金国民年金基金については、日本年金機構等が発行した控除証明書を添付します。

なお、証明書の発行以降に納付した額がある場合、証明書には反映されませんので、支払ったことが分かる書類を添付しましょう。

 

小規模企業共済等掛金控除

 

申告書の以下の部分になります。

 

ポイント

・小規模企業共済とは、経営者のための退職金制度です。

主に、個人事業主や自社に退職金制度のない中小企業経営者が加入するので、サラリーマンには関係ありません

支払った掛金全額が所得控除になり、受取時には退職金は退職所得となります。

 

小規模企業共済についてはこちらの記事へ

 

・確定拠出年金や個人型年金についてもこちらで控除します。

 

控除額・計算方法

実際に支払った金額がそのまま控除額となります(支払ベース)。

 

準備しておくもの

金額の多寡にかかわらず、支払った掛金の控除証明書を添付します。

なお、給与から天引きされている場合は添付不要です。

 

手元にない場合や紛失した場合は再発行を

以上、4種類の所得控除について見てきました。

基本的には、控除を証明するための書類が必要となります。

 

もし、証明書が手元にない場合や紛失してしまった場合などは、早めに保険会社等へ再発行を依頼しましょう。

現在、本人確認が厳しいため、原則、本人からの連絡でないと受け付けてもらえないことがほとんどです。

再発行には少し時間がかかりますので、なるべく早く依頼しておくのが得策です。

 

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