オーナー社長必見 会社とのこんな不動産取引はアブナイですよ②
前回に引き続きまして、オーナー社長と会社との間によく見られるアブナイ不動産取引を紹介します。
前回は、会社で所有する不動産を社長へ通常より低い金額で売却するケースを見ていきました。
会社も社長も驚異的な課税が待っていましたよね。
今回も前回と似たケースを紹介します。
社長が所有する不動産を会社へ通常より高い金額で売却するケースです。
例えば、社長の自宅を自分の会社に時価よりも高い金額で売却する場合。
こちらも思わぬ税負担を招く可能性がありますよ。
目次
税務上の取扱い
前回のブログでも書きましたが、オーナー社長と会社は法律上別々の「人格」とされます。
なので、いくら自分の会社だからといっても、第三者と同様に適正な取引が求められます。
時価よりも高い金額で取引すれば、時価での取引として引き直されます。
そして、時価と実際の金額との差額は、会社から社長へ役員賞与の支給があったものとされます。
原則として、役員賞与は会社の経費(損金)とはなりませんので、その分だけ所得(≒利益)が増えることになります。
当然、社長側も差額相当額の役員賞与の支給があったものとされますので、相当な課税が待っています。
具体例
具体例で確認します。
帳簿価額は3千万円とします。
こうしたケースでは、社長は少しでも会社に高値で買い取ってもらって、自分の実入りを増やしたいと考えているのかもしれません。
不動産取引はたびたび発生するわけではなく、1回あたりの金額も高額となりますので、ある意味では非常に目立ちます。
特に税務調査では、必ず確認される項目の一つでしょう。
こちらも驚くべき税金
ここからは、実際に税務的にどのような取扱いを受けるか前述の具体例をもとに紹介します。
少々、難しいので飛ばしていただいても構いませんが、驚異的な金額になります。
実は、税金の取扱いを考える際、今回の取引を2つに分けます。
「えっ?」と思われるかもしれませんが、税務上の考え方は特殊です。
専門家の間では当たり前なのかもしれませんが。。。
今回の取引は、「不動産を売った」という1つの取引(見かけ上)なのですが、以下の2つに分けます。
②会社が社長へ役員賞与を支給(=社長が会社から役員賞与をもらった)
ちょっとややこしいので、図にしてみます。
会社はあくまでも時価で不動産を買ったものとして計算します。
不動産の購入金額は時価である4000万円となります。
また、購入金額のうち時価を超える部分の金額(6000万円)は、社長へ賞与(役員賞与)を支払ったとされます。
原則として、役員賞与は会社の経費にはなりませんので、役員賞与に対する法人税、住民税、事業税への課税が待っています。
仮に、会社の税率を30%とすると、
6000万円×30%=1800万円
の税金がかかります。
さらに、役員賞与に対する源泉所得税を徴収しなければなりません。
一方の社長には、役員賞与6000万円への給与課税(所得税、復興特別所得税、住民税)が待っています。
仮に、社長の税率を最高税率の55%(※所得税と住民税10%のみ、復興特別所得税は考慮外とします)とすると、
6000万円×55%=3300万円
の税金がかかります。
また、不動産を売った場合には、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得の計算上、時価である4000万円を収入金額として計算します。
長期保有の場合の税率は20.315%です。
譲渡にかかる登録免許税等やその他の経費を仮に300万円とすると、
(4000万円-300万円)×20.315%≒751万円
となります。
時価よりも高い金額で売却することで、社長は通常よりも約2500万円も多く税金を支払うことになりますね。
本当に恐ろしい額の税金です!
まとめ
以上見てきましたように、やはり会社にも社長にも数千万円という驚異的な課税が待っています。
不動産取引はとかく高額になりやすい取引ですので、時価がいくらになるのかは慎重に判断しなければなりません。
売却金額は、不動産鑑定士等の専門家や不動産業者へ事前に相談して決めるようにしましょう。
※本文中の内容は、投稿時点での税法等に基づいて書いています。
読みやすいよう一部で簡略化して解説している場合もあります。
実行される場合は専門家に相談の上、十分な検討が必要です。
本記事内容をもとに実行された場合の損害については、弊所では一切責任を負いかねますのでご了承ください。