平成30年度税制改正 所得拡大促進税制 改正後はこうなる
平成30年度税制改正により、従来からある「所得拡大促進税制」が大幅に変更されます。
いわゆる、会社が従業員の賃金を上げた場合に受けられる税額控除制度ですよね。
十分な賃上げをした会社に対しては、賃上げ金額の一定割合分の税金を安くしてくれるものです。
中小企業の場合を中心に説明します。
目次
所得拡大促進税制 改正後はこうなる
改正後の概要は以下のようになります。
・青色申告法人であること
・平成30年4月1日~平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において適用される(時限措置)
・一定割合(後掲)が1.5%以上上がれば、給料総額の増加額の15%を税額控除
・さらに、一定割合以上の人材投資をすれば、さらに10%を上乗せして税額控除
・法人税額の20%で頭打ち
ちなみに、従来の所得拡大促進税制の適用要件であった「基準年度(平成24年度ベース)との比較」要件は廃止されます。
これによって、基準年度との比較計算がなくなるので、今まで計算や判定がけっこう大変でしたが、実務的にはスッキリしそうです。
一定割合とは?
前述の一定割合要件とは、次になります。
(当期の平均給与―前期の平均給与)÷前期の平均給与≧1.5%
つまり、
当期と前期の平均給与の差額を前期の平均給与で割った数字が1.5%以上である
ということです。
イメージしやすいように、簡単な具体例を挙げてみます。
・当期の平均給与 42万円
・前期の平均給与 40万円
・42万円―40万円=2万円(差額)
・2万円÷40万円=5%≧1.5%
たった2万円上げただけでも、上記の例だと適用できます。
あくまでも平均ベースですが、1.5%以上というのは意外とハードルが低いのかもしれません。
15%の税額控除
前述の適用要件を満たせば、所得拡大促進税制の適用を受けて税金が安くなります。
中小企業なら15%税額控除なので、かなり大きいですよね。
ベースは「給与等支給増加額」を使い、その15%相当分が税額控除されます。
この「給与等支給増加額」とは、簡単にいうと、当期の従業員の給料総額と前期の従業員の給料総額の差額です。
従業員には、役員とかその親族等の人件費は除かれます。
10%の上乗せ措置
また、次の3つの要件を満たすと、15%にさらに10%を上乗せして税額控除できます。
・上述の一定割合が2.5%以上であること
・従業員に対する研修費等を前期よりも10%以上増やすこと
・中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が行われたものとして証明されたこと
設立年度や従業員の出入りが多い会社は不可
所得拡大促進税制の適用を受けるために、その他いくつか注意点があります。
まずは、設立事業年度が除かれているので、設立したばかりの会社は適用できません。
現在の所得拡大促進税制だと設立事業年度でも適用できますので、この点注意が必要です。
また、前期と当期で引き続き雇用されている従業員(継続雇用者といいます)がいることが前提です。
入社しても従業員がすぐに辞める、といった出入りの多い会社には適用がありませんので、注意が必要です。