税理士がやさしく解説 平成29年分扶養控除等申告書の書き方
年末調整の時期ですね。
そろそろ書類を勤務先からもらうのではないでしょうか。
・扶養控除等申告書
・保険料控除申告書
の2種類です。
年1回のこの時期にしか書きませんので、書き方に自信がない人も多いのではないでしょうか。
そんな人のために書き方をやさしく解説しました(できる限りやさしく書いたつもりです・・・)。
今回は「平成29年分の扶養控除等申告書」についての解説です。
ご参考にしていただければありがたいです。
目次
そもそも扶養控除等申告書ってなに?
会社勤めが初めての人は、もしかして初めて目にする書類なのかもしれません。
年末調整の必須アイテム(!?)の一つが「給与所得者の扶養控除等申告書」というものです。
年末調整というのは、ごく簡単にいうと、
「会社があなたの所得税を代わりに精算してくれる」システム
です。
会社はあなたの所得税を正しく計算するために、さまざまな情報を集めねばなりません。
今回ご紹介するのが2種類のうちの「給与所得者の扶養控除等申告書」です。
こちらは、あなた自身の情報(氏名、住所、生年月日等)や配偶者、扶養親族の状況を書き入れるための書類となっています。
それでは、具体的な記載方法を見ていきますので、下記の書類をご準備ください。
まずは「勤務先」と「あなた」の情報を記載する
「所轄税務署長等」
※記載例です。
「税務署長」
用紙の1番左上にある空欄には、あなたの会社が所在している税務署名を記載します。
印字されていることが多いと思いますが、もし不明な場合は空欄で大丈夫です。
「市区町村長」
その下の空欄には、あなたが住んでいる市区町村名を記載します。
「勤務先」
※記載例です。
※基本的には、勤務先側が記載していることがほとんどです。
空欄で渡された場合は以下のように記載します。
「給与の支払者の名称(氏名)」
あなたの勤務先の名称を記載します。
勤務先が個人の場合は、個人事業主の氏名を記載します。
「給与の支払者の法人(個人)番号」
この欄は勤務先が書きますので、空欄にしておきましょう。
「給与の支払者の所在地(住所)」
あなたの勤務先の住所を記載します。
支店や営業所に勤務している場合であっても、とりあえず本店所在地を記載していれば問題ありません。
「あなた」
※記載例です。
「あなたの氏名(フリガナ)」
あなた自身の氏名とフリガナを記載します。
右横にある印マーク箇所へあなたの印鑑を捺印します。
「あなたの個人番号」
12桁のマイナンバーを記載する箇所ですが、記載の有無は勤務先にしたがいましょう。
マイナンバーはここには記載せず、勤務先は別の書類からマイナンバーを収集しているのがほとんどでしょう。
空欄にしておくのがベターです。
「あなたの住所又は居所」
現在、あなたの住んでいる住所を記載します。
もし、住民票を移していない場合は、そちらの住所も勤務先に伝えておきましょう。
「あなたの生年月日」
あなたの生年月日を記載します。
「世帯主の氏名」「あなたとの続柄」
世帯主の氏名とその方との関係を記載します。
自分なら本人で大丈夫です。
世帯主がお父さんなら、父親の氏名と父親と記載します。
「配偶者の有無」
配偶者がいるかどうかを〇で囲います。
ちなみに、ここでは、控除対象となっているかどうかは関係ありません。
「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」
こちらは、空欄で大丈夫です。
まず使わない欄ですね。
2カ所以上勤務している方が対象になりますが、従たる給与の申告書が出てくることはまずありませんので、割愛させていただきます。
配偶者の情報を記載する
控除対象配偶者とは
控除対象配偶者とは、所得者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます。)で、合計所得金額が38万円以下の人です。
何となくの理解でも結構です。
詳しく説明するとかなりややこしくなってしまいますので、詳細は割愛させていただきます。
合計所得金額が38万円以下について補足しておきます。
要するに、配偶者が専業主婦(夫)であれば、所得ゼロのため対象です。
もし、配偶者がパートをしているなら、本年中の給与収入が103万円以下だと対象になります。
あまりないケースかもしれませんが、他に配偶者に不動産収入があれば、収入から必要経費を引いた所得金額で判定します。
なお、配偶者と同居していることは必ずしも要件でありません(生計を一にする)。
※分かりやすく書くためにあえて説明を簡略化している部分もあります。
記載例
記載例を書いておきます。
記載にあたっての注意点がいくつかあります。
・個人番号は前述のように、勤務先にしたがいましょう。
空欄でよいと思います。
・「住所又は居所」は、あなたの住所と同じであれば、「同上」でも可です。
・「平成29年中の所得の見積額」は所得ベースであって、収入ベースではありません。
よく、収入を記載しているのを見かけますが、間違いです。
たとえば、給与収入95万円の場合は、
95万円-65万円(給与所得控除額)=30万円
と記載します。
・老人控除対象配偶者に該当する人は年齢70歳以上(昭和23年1月1日以前に生まれた人)となります。
該当するなら「〇」と記載します。
・「非居住者である親族」「生計を一にする事実」の欄は国外に親族がいる場合に記載します。
国内で居住しているなら空欄で大丈夫です。
扶養親族の情報を記載する
扶養親族とは
扶養親族とは、所得者と生計を一にする親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます。)で、合計所得金額が38万円以下の人です。
前述の「控除対象配偶者」と似たような感じですね。
配偶者か親族かの違いです。
ここでいう、親族とは6親等内の血族と3親等内の姻族です。
イメージですが、かなり遠い親戚まで含まれます。
この欄に記載できるのは、扶養親族のうち年齢16才以上の人です。
生年月日でいうと、平成14年1月1日以前に生まれた人です。
年齢別に適用できる控除額が以下のように違います。
・年少扶養親族(16才未満)⇒控除はありませんが、後述する「住民税に関する事項」欄へ記載します。
・控除対象扶養親族(16才~18才、23才~69才)⇒38万円
・特定扶養親族(19才~22才)⇒63万円
・老人扶養親族(70才以上)⇒同居老親等なら58万円、その他48万円
※分かりやすく書くためにあえて説明を簡略化している部分もあります。
記載例
記載例を書いておきます。
一般の控除対象扶養親族の場合となります。
記載にあたっての注意点ですが、基本的には前述の配偶者と同じです。
年齢、つまり生年月日によって受けられる控除額が異なるので、正しく把握して記載しましょう。
特定扶養親族がいる場合
特定扶養親族に該当する人は、平成7年1月2日~平成11年1月1日までの間に生まれた人です。
いわゆる、大学生にあたる年齢です。
一般的には、大学生が下宿していて、毎月親から仕送りをもらっているケースが考えられます。
この場合、別居でも「生計を一にする」状況でしたら該当します。
同居老親等がいる場合
自分の両親や配偶者の両親と同居しているような場合は、同居老親等として控除額が上がります(58万円)。
以前、ブログに書いておりますので、詳しくはそちらの記事をご覧ください。
同居老親等に該当する人がいれば、以下のように記載します。
同居老親等以外の場合
同居老親等以外なら、控除額は48万円となります。
なお、「同居」に該当するか否かは難しい判断です。
必ずしも同居しておく必要はありません。
参考に、国税庁HPの例示を引用します。
同居老親等の「同居」については、病気の治療のため入院していることにより納税者等と別居している場合は、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても、同居に該当するものとして取り扱って差し支えありません。ただし、老人ホーム等へ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、同居しているとはいえません。
障害者、寡婦、寡夫、勤労学生の情報を記載する
障害者とは
障害者控除を受けるために記載します。
税務上の障害者とは以下の人をいいます。
国税庁HPより引用。
障害者控除の対象となるのは、次のいずれかに当てはまる人です。
- 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
この人は、特別障害者になります。- 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人
このうち重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者になります。- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者になります。- 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人
このうち障害の程度が1級又は2級と記載されている人は、特別障害者になります。- 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が(1)、(2)又は(4)に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人
このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者になります。- 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人
このうち障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人は、特別障害者となります。- 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人
この人は、特別障害者となります。- その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする(介護を受けなければ自ら排便等をすることができない程度の状態にあると認められる)人
この人は、特別障害者となります。
あなた自身が障害をお持ちの場合
本人欄の「一般の障害者」か「特別障害者」欄のどちらか該当する方に〇をします。
また、右の空欄に具体的な内容を記載します。「左記の内容」の箇所です。
配偶者や扶養親族が障害をお持ちの場合
控除対象配偶者が障害をお持ちの場合は、「控除対象配偶者」欄の「一般の障害者」か「特別障害者」欄のどちらか該当する方に〇をします。
また、扶養親族が障害をお持ちの場合は、「扶養親族」欄の「一般の障害者」か「特別障害者」欄のどちらか該当する方に〇をして、人数も記載します。
また、右の空欄に具体的な内容を記載します。「左記の内容」の箇所です。
内容欄にはその人の氏名や障害の等級、該当する事実を記載します。
寡婦(夫)とは
寡婦(夫)控除を受けるために記載します。
意外と忘れやすい控除のため、見落とさないように注意しましょう。
税務上の寡婦(夫)に該当するかどうかの要件はややこしいです。
別のブログ記事に紹介してありますので、そちらをご覧ください。
該当するものに〇をします。
勤労学生とは
勤労学生控除を受けるために記載します。
実務ではほとんどお目にかかることは少ないと思われます。
税務上の勤労学生とは、以下の人をいいます。
国税庁HPより引用。
勤労学生とは、その年の12月31日の現況で、次の三つの要件の全てに当てはまる人です。
- 給与所得などの勤労による所得があること
- 合計所得金額が65万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
例えば、給与所得だけの人の場合は、給与の収入金額が130万円以下であれば給与所得控除65万円を差し引くと所得金額が65万円以下となります。- 特定の学校の学生、生徒であること
この場合の特定の学校とは、次のいずれかの学校です。
- イ 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
- ロ 国、地方公共団体、学校法人等により設置された専修学校又は各種学校のうち一定の課程を履修させるもの
- ハ 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの
以上のいずれかの学校に当てはまるかどうか分からないときは、通学している学校の窓口で確認してください。
住民税に関する事項
所得税上の「年少扶養親族」に該当する人がいる場合に記載します。
16才未満の扶養親族となります。
今年生まれた子がいる場合もこちらに記載します。
記載方法は、扶養親族の箇所と同じなので、参照してください。
もしも記載もれがあると、住民税からの控除が受けられなくなるため忘れないようにしましょう。
他の所得者が控除を受ける扶養親族等
実は、とばした箇所が1つあります。
下記の欄です。
こちらは、特に記載しなくても問題ありませんので、空欄で大丈夫です。
以上、平成29年分給与所得者の扶養控除等申告書についての書き方の説明を終わります。