矢口税理士事務所
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高年収の年金受給者が受けている「二重控除」は改正されるのか

来年度の税制改正の目玉を一つ挙げるとすると、何といっても所得税改革でしょう。

一定以上の給与をもらっている人の給与所得控除額をさらに下げる見通しです。

まさに高額所得者への狙い撃ちですね。

給与所得控除額はここ数年ずっと下がっています(現行:年収1000万円超は上限220万円)。

 

また、基礎控除は現行の38万円から50万円程度に一律引き上げる予定ですが、高額所得者には基礎控除を撤廃するという記事もありました。

こうなると、めっちゃ稼いでいる方々は日本で働くモチベーションを失ってしまうのでは?と個人的に思います。

 

さらに、高額な報酬をもらっている高齢者への年金課税も見直されるようです。

年金には一定の控除額があるので、給与と年金をもらっていれば、給与所得控除と年金控除のダブル控除となります。

まさに国はそこにメスを入れようとしています。

 

今回は、このダブル控除(二重控除)について考えてみます。

 

 

目次

給与所得控除額は年収の約3割控除される

サラリーマンの給与収入からは一定の金額が控除されています。

これを給与所得控除といいます。

フリーランスのような個人事業主にはありません。

そのため、実際にかかった経費しか引けない個人事業主からは不公平だという声もあります。

 

平成29年分の控除額は以下のようになります。

 

(出典:国税庁HP)

 

例えば、年収600万円の人なら

600万円×20%+540,000円=1,740,000円

となります。

 

給与所得控除額は年収1,000万円以内なら、だいたい年収の3割程度です。

 

公的年金には一定の控除がある

国からの公的年金(国民年金、厚生年金等)には、老後の生活を保障するという意味で税金が安くなる措置が取られています。

「公的年金等控除額」という控除枠が設けられています。

年金をもらう人の「年齢」と「年金収入額」によって、控除額は変わります。

年齢65才以上なら、最低でも年間120万円控除してもらえます。

あくまでも目安ですが、収入の約5割を差し引けるというものです。

 

公的年金等の所得金額(雑所得)は以下のようになります。

 

(出典:国税庁HP)

 

例えば、年齢が67才で公的年金等の収入金額が300万円あるなら、

300万円-120万円=180万円

が所得金額となります。

 

二重控除(ダブル控除)って?

前述のように、2種類の控除額を見てきました。

・給与所得控除額

・公的年金等控除額

どちらも結構大きな金額ですよね。

 

そのような控除をダブルで受けている方がいます。

年金をもらいながら、給与収入も得ている高齢者の方です。

まだまだ年金などもらえる年齢ではない自分にとっては、収入が2つもあるのはなんとも羨ましい話ですが。。。

 

現在の税制では、給与と年金のダブル収入の場合、否応なく二つとも控除されるのです。

 

同じ収入でも税金はまったく変わる

控除額がどのくらいのインパクトがあるか分かりやすいように図を使います。

 

ここに、同じ収入の方が2人います(図の左側と右側はそれぞれ同じ大きさです。)

一方は給与収入だけのサラリーマンです。

 

 

もう一方は年金と給与収入のある人です。

 

上と下の「課税所得」という箱が税金の大きさとお考え下さい(実際にはこれに税率を掛けて求めます)。

同じ収入であっても、後者はダブルで控除の恩恵を受けることができるため税金は安くなります

 

私も長年この仕事をしていますが、今までほとんど意識していなかった部分です。

言われてみると、確かにそうだなあと感じました。

 

今後の税制改正で、一定の収入以上の方には、ダブル控除の金額を抑制していく方向のようです。

 

収入別にみる所得金額の違い

具体的に金額を出して、どのくらい差があるのかを比較してみました。

 

※ここでは、年収によって年金がカットされる「在職老齢年金」については考慮しないものとします。

 

以下は、年収600万円の場合です。

A:給与300万円+年金300万円

B:給与600万円

 

この場合、表面上の収入は600万円と同額ですが、税金を計算する上での所得金額には約54万円の差があります。

 

 

以下は、年収1500万円の場合です。

A:給与1200万円+年金300万円

B:給与1500万円

 

この場合、表面上の収入は1500万円と同額ですが、税金を計算する上での所得金額にはなんと約120万円の差があります。

 

 

まとめ

年金をもらいながら給与収入も得ている場合は、控除額が大きくなる現在の状況を見てきました。

確かに、収入が同じでも、こんなに差が出てくるのは不公平だという感じも受けました。

しかし、少子高齢化の現代で、がつがつ稼いでいる高年収の高齢者がいるのはむしろ日本にとっては良いことではないでしょうか。

それを税制によって狙い撃ちしすぎると、それこそ働く意欲がどんどんなくなってしまいます。

改正が、時代の流れに沿った方向へ進むことを願っています。

 

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