ビットコインと税金
“ビットコインで生じた利益は雑所得として取り扱う”
9月6日、国税庁からビットコインについて、上記のような見解が発表されました。
ビットコインの課税関係が正式に明らかになりました。
取扱いを明確にしたのは、投機的な取引が増えているためと言われています。
今後、ビットコインの取引はますます活発になっていくのは必至でしょう。
9月12日の日経新聞にも「仮想通貨の利益、雑所得に」という記事が出ていました。
今回の見解を発表したことで、国はさらに規制の対象にしていくと思われますので、最新の取り扱いに目が離せません。
目次
国税庁の見解
まずは、国税庁から発表されたビットコインの取り扱いを見たいと思います。
具体的には、国税庁ホームページの「タックスアンサー」に掲載されています。
以下、引用(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1524.htm)
ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
[平成29年4月1日現在法令等]
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。
(所法27、35、36)
上記のように、ビットコインを使用することにより生じる損益は、雑所得になります。
「ビットコイン」と明記されているのですが、では他の仮想通貨(例えば、アルトコイン)は課税対象にならないのでしょうか。
そう読めなくはないですが、ビットコインだけの取扱いとは考えづらいです。
個人的には、仮想通貨全般が課税対象になると思いますが、正直分かりません。
そもそも雑所得って?
ビットコインの利益が雑所得になるのは分かりました。
でも、そもそも雑所得ってなに??という方も結構いらっしゃると思います。
そういう方のために、簡単に説明をしておきます。
税金には色んな種類があります。
会社にかかる税金、個人にかかる税金とかなり多いです。
個人にかかる税金の代表格が所得税です。
所得税以外にも住民税や事業税もかかる場合がありますが、詳細はここでは割愛します。
所得税には色んな種類の所得があって、全部で10種類あります。
雑所得はその中の一つにあたります。
一番馴染みのあるのが給与所得でしょう。個人で事業をされているなら事業所得。
不動産をお持ちなら不動産所得などなど、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
所得税は所得の種類がたくさんありますので、受験の時に覚えるのは大変でした。。。
なぜ所得税にはたくさん種類があるのかというと、理由の一つとしては、計算の仕方がそれぞれ異なるからです。
優遇されている所得もあるし、そうでない所得もあります。
たとえば給与所得なら、年収600万円の方でしたら、174万円を控除することができます。
事業所得なら青色申告で一定の要件を満たせば、65万円を控除でき、マイナスがでても翌年以降に繰越が可能です。
一方で、雑所得にはこれといった優遇はありません。
①マイナスがでても、他の所得と相殺ができない
②翌年以降にマイナスを繰越できない(先物取引等のように中にはできるものもあります)
③他の所得と合算されるため、税率が高くなればなるほど税金も多額になる
といった特徴があります。
ビットコインによる税金のシミュレーション
実際にどのくらいの税金になるか計算してみました。
前提として、年収600万円の会社員(年齢40才未満、配偶者有、子なし)がビットコインにより20万、50万、100万、1000万の利益を得た場合について計算しました。
もちろん、配偶者の有無や生命保険等、扶養親族の有無等で数字は変わります。
利益0円なら、約43万円
利益20万円なら、約47万円
利益50万円なら、約54万円
利益100万円なら、約68万円
利益1000万円なら、約396万円
ちなみに、年収1000万円の会社員(前提は上記と同じ)の場合だと以下のようになりました。
利益0円なら、約135万円
利益20万円なら、約141万円
利益50万円なら、約150万円
利益100万円なら、約165万円
利益1000万円なら、約537万円
※上記は所得税の他、復興特別所得税、住民税を含む
数字を見られていかがでしょうか。
所得税は年収の高い方ほど税率が高くなるような仕組みとなっています。
そのため、ビットコインによる利益に対しても高い税率が課されるので、税金は多額にのぼります。
会社員なら年間利益20万円以下は申告しなくてよい
会社員の場合、会社が年末調整を行ってくれるので、通常は確定申告を行いません。
ただし、給与以外に、年間の所得が20万円を超えれば確定申告を行わなければなりません。
逆に言いますと、会社員で年間所得(利益)が20万円以下の場合なら確定申告する必要はありません。
税金を納付しなくてよいです。
なお、個人で事業をされている方は、所得の金額に関わらず、確定申告をする必要があります。
無申告ならどうなるか
税金の申告を行わなければならないのに、税務署に申告しない、納付しないとなれば、場合によっては多額の罰金が課せられる可能性があります。
本来納付しないといけない税金以外に、罰金がかかってきます。
具体的には、延滞税、無申告加算税、重加算税という罰金です。
延滞税は法定の納期限から2カ月以内だと年利2.7%ですが、2カ月を超えると年利9.0%という高利になります(H29年の場合)。
無申告加算税は申告をしていないと課される罰金です。
原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額となります。
重加算税は悪質な税逃れをした場合に課される罰金で、一番重いものになります。
35%もかかりますので、本税100万円とすると重加算税35万円で合計135万円もの納付となります。
最初からちゃんと申告納付しておけば、罰金を支払う必要などありませんので、必ず期限内に申告は行いましょう。
ちなみに、確定申告の時期は毎年2月16日~3月15日になります。
もし、申告や税金のことで分からないことがありましたら、矢口税理士事務所までご相談いただければと思います。